伝統的な黒い土鍋に盛られたドロワット。深紅のソースにチキンとゆで卵が見える
🔪下準備30分
🔥調理90分
🍽️分量4
🌍料理エチオピア料理

ドロワットの作り方|エチオピアのチキンシチュー

約42分で読めます世界ごはん紀行編集部
Cooking flow

作り方を先に見る

STEP 11 / 7

鶏肉の下処理(10分)

手順1: 鶏肉の下処理(10分)

鶏もも肉800gの水分をキッチンペーパーで押さえ、関節でドラムとサイに分けるか、厚さのそろう4〜5cmほどの塊にします。レモン汁大さじ2と塩小さじ1/2を全体になじませ、密閉して30分冷蔵します。レモンは香りと後味を整える下処理で、長く漬けて肉を柔らかくする工程ではありません。生肉に触れた手や器具は、次の作業へ移る前に洗ってください。

固ゆで卵4個は殻をむき、長さ方向に浅い切れ目を4本入れます。深く切ると卵白が崩れ、煮込み中に黄身が出ます。卵をまだ用意していなければ、別鍋で固ゆでにして冷ましてから使います。

STEP 22 / 7

玉ねぎを炒める(25〜40分)

手順2: 玉ねぎを炒める(25〜40分)

赤くする前に、玉ねぎの水分をペーストへ変える工程です。

玉ねぎ4個(800g)を3〜5mmのみじん切りにし、厚底鍋へ入れます。油もバターも入れず、弱めの中火で加熱してください。最初の10分は水分が出て鍋底に汁がたまり、20〜25分で白い粒が透き通ってかさが減ります。底が乾いて焦げそうなときだけ、水を大さじ1〜2ずつ加えて鍋底をこそげます。

玉ねぎが柔らかくなり、ヘラで押すと粒が崩れて鍋底をゆっくり流れるようになれば次へ進みます。濃い茶色を急いで作る必要はありません。焦げた黒い粒や苦い匂いが出た場合は、火を弱め、焦げた部分を広げないように上の玉ねぎだけ別鍋へ移します。

強火で時間を縮めると、鍋底だけが先に茶色くなります。水を足すことは失敗ではなく、温度を下げて焦げを止めるための戻し方です。水を入れすぎてしゃばしゃばになったら、蓋を外して弱火で数分煮詰め、ヘラの跡が一瞬残る濃さに戻します。

STEP 33 / 7

ベルベレを加える(5分)

手順3: ベルベレを加える(5分)

ベルベレの材料を小さな器で混ぜ、水大さじ3を加えてペーストにします。玉ねぎの鍋に植物油大さじ3を加え、弱火へ落としてから、にんにくとしょうがを入れます。45〜60秒、香りが立つまで混ぜたら、ベルベレペーストを加えます。

弱火のまま3〜5分、底から返すように混ぜます。粉っぽさが消え、深い赤色のペーストになれば十分です。黒い斑点が出たり、唐辛子の焦げた匂いがしたりしたら、すぐに水を大さじ1加えて温度を下げます。水分が飛び、鍋底に薄い油の筋が見えたら進みます。

STEP 44 / 7

ニテルキベと水を加える(5分)

手順4: ニテルキベと水を加える(5分)

ニテルキベ80gを加え、溶けたら水200mlを注ぎます。鍋底をこすりながら弱めの中火で5分煮て、玉ねぎとベルベレを一体化させます。ヘラを通した跡が2〜3秒残り、ソースが赤い帯になって戻る状態が目安です。固すぎるときは水を大さじ1ずつ、緩すぎるときは蓋を外して2〜3分ずつ調整します。

STEP 55 / 7

鶏肉を入れて煮込む(35〜45分)

手順5: 鶏肉を入れて煮込む(35〜45分)

下処理した鶏肉を皮側から入れ、水150mlを加えます。中火で鍋肌がふつふつするまで温度を上げ、蓋をして弱火に落とします。鶏肉の一部がソースから出ていても、煮込みの途中で上下を返せば問題ありません。

35〜45分、15分ごとに一度だけ上下を返します。鍋底から焦げた匂いがしたら、鶏肉を動かす前に水を大さじ2加えます。骨の近くまで火が通り、鶏肉の最も厚い部分が75℃で1分以上になったことを確認してください。温度計がなければ、骨のそばに竹串を刺して赤い汁が出ないことを確認しますが、厚い部分の温度測定の代わりにはなりません。

STEP 66 / 7

ゆで卵を加える(5〜10分)

手順6: ゆで卵を加える(5〜10分)

鶏肉に火が通ったら、切れ目を入れた卵4個をそっと加えます。蓋をして弱火で5〜10分、卵の表面が赤く染まり、ソースが再び温まるまで煮ます。卵を転がし続けると切れ目が広がるため、途中で一度鍋をゆする程度にします。

火を止める前にソースを味見し、残りの塩で整えます。ぽってりしていて、インジェラに置いたときにすぐ流れ落ちない濃さなら成功です。水っぽければ卵を取り出して蓋を外し、弱火で数分煮詰めてから戻します。

STEP 77 / 7

仕上げと盛りつけ

手順7: 仕上げと盛りつけ

火を止めて5〜10分休ませます。表面に赤いソースと金色の油が分かれて見え、鶏肉を持ち上げても崩れない状態が食べごろです。[インジェラ](/recipes/africa/ethiopia/injera)を大皿に広げ、その上に鶏肉、卵、ソースを置きます。家庭で取り分けるなら卵を1人1個にすると分けやすくなります。インジェラがなければ、白ごはんや薄いパンを別に添えて、ソースを少しずつ合わせてください。

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Ingredients

材料を分けて見る

4品目

鶏肉と卵

材料 分量 代替・備考
鶏もも肉(骨付き) 800g(約4本) 皮を外した骨付き。骨なしもも肉なら煮込みを短くする
レモン汁 大さじ2 下処理用。香りを整え、表面をさっぱりさせる
ゆで卵 4個 固ゆで。殻をむき、表面に浅い切れ目を4本入れる
塩 小さじ1(約6g) 下味に小さじ1/2、残りはソースの味見後に調整
4品目

玉ねぎベース

材料 分量 代替・備考
玉ねぎ(大) 4個(約800g) 赤玉ねぎまたは黄玉ねぎ。3〜5mmのみじん切り
植物油 大さじ3 ひまわり油、菜種油など。玉ねぎが柔らかくなってから加える
にんにく 5〜6片(すりおろし) —
しょうが 3cm(すりおろし) —
12品目

ベルベレ(スパイスミックス)

材料 分量 代替・備考
パプリカパウダー 大さじ3 色と風味のベース。辛くないタイプ
カイエンペッパー 小さじ1〜2 辛さの調整用。最初は小さじ1から
クミンパウダー 小さじ1 —
コリアンダーパウダー 小さじ1 —
カルダモンパウダー 小さじ1/2 ホールを砕いてもよい
シナモンパウダー 小さじ1/4 —
ターメリック 小さじ1/2 —
オールスパイス 小さじ1/4 —
ナツメグ 小さじ1/8 —
クローブパウダー 小さじ1/8 入れすぎ注意。ほんの少量で十分
フェヌグリークシード 小さじ1/4 軽くつぶす。なければ省略できるが、苦味が出やすいので増量しない
黒コショウ 小さじ1/2 —
ベルベレの簡易代替

上記を一度に揃えにくい場合は、無塩の市販ベルベレ大さじ3を使い、辛さだけカイエンペッパーで調整します。カレー粉で代用する場合は、パプリカ大さじ3、カレー粉小さじ2、カイエンペッパー小さじ1を混ぜます。香りの方向は変わりますが、玉ねぎとニテルキベを丁寧に仕上げれば、料理全体の骨格は保てます。商品ごとに塩や唐辛子の量が違うため、追加の塩はソースを味見してから入れます。

4品目

ニテルキベ(スパイスバター)

材料 分量 代替・備考
無塩バター 100g 澄ましバターにして約80gを煮込みに使う
ターメリック 小さじ1/4 バターの色付けと風味
カルダモン(ホール) 2粒 軽くつぶして使う
オレガノ(乾燥) 小さじ1/4 コセレットの代替。香りは同じではないので少量にする
ニテルキベ(スパイスバター)の作り方
  1. 無塩バター100gを小鍋に入れ、弱火で溶かす
  2. 白い泡(乳固形分)が浮いてきたらスプーンで取り除く
  3. ターメリック、つぶしたカルダモン、オレガノを加え、弱火のまま5分加熱
  4. 茶こしで濾して約80gを取り分ける。残りは別の料理に使い、保存は冷蔵で早めに使い切る

コセレット(koseret)はエチオピア料理で使われる香草ですが、日本で入手しやすい乾燥オレガノは同じ香りではありません。代替を隠さず、少量にとどめる方がベルベレの香りを邪魔しません。ニテルキベを作らない場合は無塩バター80gでも煮込めますが、澄ましバターほどの香ばしさと透明な油の層は出ません。インジェラに合わせるなら、香りの差が分かりやすくなります。

2品目

煮込みと盛りつけ

材料 分量 代替・備考
水 約400ml ベルベレ用45ml、ソース用200ml、鶏肉用150ml。焦げつき防止の追加分は別に用意
インジェラまたは薄いパン 4人分 入手できなければ白ごはんでもよい
6品目

栄養情報(4人分から取り分けた場合の概算)

栄養素 4人分の1/4あたり
カロリー 約660kcal
たんぱく質 約37g
脂質 約44g
炭水化物 約23g
食物繊維 約5g
ナトリウム 約620mg
アレルギー情報

この料理には卵、乳製品(バター)が含まれます。卵を省けば鶏肉のワットとして食べられますが、卵入りのドロワットとは別の仕上がりです。断食の食卓に合わせる場合は、鶏肉・卵・バターを赤レンズ豆やひよこ豆、植物油に置き換えます。これは家庭用の植物性ワットであり、宗教上の実践は信仰や個人の事情に従ってください。

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材料表の分量4人分

表内の数値を目安として再計算します。塩、辛味、油は味を見ながら調整してください。

栄養情報 1人分の目安
165kcal
エネルギー
9.3g
タンパク質
11.0g
脂質
5.8g
炭水化物
1.3g
食物繊維
155mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。
Shop the pantry

材料からそろえる、味の決め手

買い出しガイド

この料理に使う食材・道具

ベルベレを一度だけ試すなら、市販品を選んでスパイスを余らせない方が合理的です。自分の配合を何度も作る人は、フェヌグリークシードを少量ずつ使うため、容量と保管場所を先に考えます。今回のカードは500gのホールタイプなので、4人分で使うのは小さじ1/4だけです。1回分だけ欲しい人には大きすぎるため、リンク先で容量を確認してから選んでください。

鍋は手持ちの厚底鍋で足ります。玉ねぎを多く入れても混ぜやすく、弱火を保てる22cm前後の鍋がある人は買い足し不要です。インジェラを自作する人だけがテフ粉を検討し、付け合わせを白ごはんにするなら、ミトミタやテフ粉は見送って構いません。価格や在庫は変わるため、カードのリンク先で商品名、容量、販売状況を確認してください。


玉ねぎが主役になる、赤いチキンシチュー

包丁で玉ねぎを細かく刻み、鍋底を埋めるほどの量を弱めの火にかける。水分が出て、白かった粒が透き通り、やがてベルベレの赤を受け止める重いペーストになる。その時間が、ドロワットの味を決める。

ドロワット(Doro Wat、アムハラ語表記 ዶሮ ወጥ) は、骨付き鶏と固ゆで卵を、ベルベレ入りの玉ねぎソースで煮込むエチオピア料理です。「ドロ」は鶏、「ワット/ウォット」は煮込みを指します。赤い色だけを見ると辛さを想像しやすいものの、味の芯は唐辛子だけではありません。炒めた玉ねぎの甘み、乾燥スパイスの香り、ニテルキベのまろやかな脂が重なって、ひと口ごとに表情が変わります。

赤色と辛味を担うベルベレは、乾燥赤唐辛子を軸に、カルダモン、しょうが、にんにく、シナモン、フェヌグリークなどを合わせる粉末調味料です。ただし配合は一つに決まっていません。エチオピアの家庭を調べた研究でも、使うスパイスの種類と量は好み、地域で手に入る材料、文化、経済事情によって変わると報告されています。下の配合は、現地の一つの正解を再現すると宣言するものではなく、日本で香りと辛さの軸を組み立てるための家庭用レシピです。

日本の台所で大きく違いが出るのは、スパイスの数より玉ねぎの状態です。細かく刻んだ玉ねぎを急いで色づけると苦味が立ち、早く水を足しすぎるとソースの密度が上がりません。鶏肉を煮る前に、玉ねぎがペーストとして鍋底をゆっくり流れる状態まで持っていく。これが、インジェラにのせても、白ごはんに添えても味がぼやけないための判断になります。

付け合わせのインジェラ(エチオピアの発酵パン)が用意できれば、酸味のある生地が濃いソースを受け止めます。入手が難しい日は白ごはんや薄いパンで代用できますが、食べ方まで含めて楽しむなら、まずはインジェラの上に少量のドロワットを置き、ソースの粘度と辛さを確かめるのがおすすめです。

ベルベレのスパイス原料。乾燥赤唐辛子、カルダモン、フェヌグリーク、コリアンダー、黒コショウ、シナモンスティック
ベルベレに使うスパイス。配合や辛さは家庭や地域で異なる

調理のコツ

玉ねぎは色よりペーストの状態を見る

家庭用4人分なら、柔らかくなるまで25〜40分が目安です。大きな鍋で大量に作る場合はさらに時間がかかります。鍋底が先に濃くなると苦味が残るため、強火で色だけをつけないでください。ヘラの跡が一瞬残り、玉ねぎの粒が舌に残らない程度まで細かく崩れていれば、濃い茶色でなくても次へ進めます。

ベルベレは辛さより配合を調整する

ベルベレは家庭や地域で材料が変わるので、カイエンペッパーを増減して自分の食卓に合わせます。市販品を使うときは、まず表示を見て塩と唐辛子の量を確認してください。自作するならフェヌグリークシードを軽くつぶし、粉末のまま長く加熱せず、水でペーストにしてから鍋へ入れると苦味と焦げを抑えられます。

骨なしもも肉なら時間を短くする

骨付き肉は長い煮込みで形が崩れにくく、取り分けたときに料理の輪郭が残ります。骨なしもも肉を使う場合は、ソースが煮立ってから25〜30分を目安にし、75℃で1分以上を確認したら卵を加えます。胸肉はさらに火が入りやすいため、最初から小さめに切らず、大きいまま短時間で仕上げます。

保存するなら浅い容器へ移す

食べ切れない分は、清潔な浅い容器へ小分けし、室温に長く置かず冷蔵庫へ入れます。冷蔵した分は早めに食べ、温め直すときは中心まで75℃以上にしてください。卵は冷凍すると食感が変わりやすいので、冷凍するなら卵を取り分け、ソースと鶏肉を一食分ずつ包みます。異臭や粘りがあれば食べずに廃棄します。


アレンジ・バリエーション

様々なエチオピアのワット料理。ドロワット、ミスルワット、ゴメン、シロワットの小鉢
ドロワットと、赤レンズ豆や青菜を使ったワットを一皿に並べた食卓

イェベグ・ワット(羊肉のワット)

鶏肉の代わりに骨付きラム肉800gを使い、水を400〜500mlに増やします。肉が柔らかくなるまで弱火で60〜75分煮ますが、時間より中心まで火が通ったことを優先してください。卵を合わせれば祝祭向けの濃厚な一皿になります。名前は似ていても、羊の脂と香りが前に出る別のワットなので、初回は基本のドロワットを作った後に試すと違いが分かります。

ミスル・ワット(赤レンズ豆の植物性アレンジ)

鶏肉と卵を省き、乾燥赤レンズ豆200gを洗ってソースに加えます。水500mlを注ぎ、蓋をして弱火で25〜30分、豆が崩れてソースにとろみがつくまで煮ます。ニテルキベは植物油に置き換えます。エチオピア正教会の断食では肉、乳製品、卵を避けると教会の説明にありますが、これはドロワットそのものではなく、同じベルベレの香りを使った植物性のワットです。

辛さを抑える場合

カイエンペッパーをまず小さじ1/2に減らし、パプリカを大さじ3のまま使います。赤色を保ったまま辛さを下げられます。唐辛子の量が少ないとベルベレの輪郭も穏やかになるため、にんにくやしょうがを増やして別の強い香りで埋めるのではなく、食卓で少量のミトミタを足す方が調整しやすいです。小さな子どもには、取り分けた後に大人の皿だけ辛味を足します。

付け合わせを変える場合

インジェラが用意できるなら、酸味のある生地でソースをすくう食べ方を優先します。白ごはんは味が穏やかで、ベルベレの香りを確かめやすい代替です。ナンや薄いパンを添える場合は、パンを一口分にちぎり、ソースを少量ずつのせます。テフ粉を買って自作する手間をかけるのは、インジェラも含めて作りたい人だけで十分です。

香りを日本の台所で調整する場合

コセレットがないときの乾燥オレガノは、香りを完全に再現するものではありません。ニテルキベのカルダモンとターメリックを主役にし、オレガノを増やして埋めない方がまとまります。柚子皮や七味を足す方法は家庭の派生料理としては楽しめますが、ベルベレの代わりにはならないため、まずは基本配合を作ってから少量で試してください。


この料理の背景 — 断食明けに中央へ置かれるワット

インジェラの上にドロワットと副菜が美しく盛りつけられたエチオピアのメソブ
インジェラの上にドロワットと副菜を盛りつけたエチオピアの食卓

祝祭の料理である理由

ドロワットを理解する鍵は、鶏肉の味よりも、断食と祝祭の切り替わりにあります。エチオピア正教会の公式説明では、断食期に肉、牛乳、バター、卵などの動物性食品を避け、長い断食の終わりを礼拝後の食事で祝います。Jeff Koehlerがアディスアベバの一家を取材した記事でも、長い断食を終える復活祭の食卓に、前日から煮込んだドロワットが置かれていました。宗教を実践する人すべての食卓を一例で代表させることはできませんが、動物性の食材を使う濃いワットが「特別な日に作る料理」として語られる背景は見えてきます。

同記事の一家では、鶏を12切れに分け、卵を12個添えて使徒を表すという盛りつけが紹介されています。これは取材先の食卓で語られた象徴であり、すべての家庭に共通する決まりとして扱うべきものではありません。日本の4人分で鶏もも肉800gと卵4個にするのは、その食卓の意味を数量まで再現するためではなく、家庭の鍋でソースを主役にするための分量です。

ベルベレとワットの地域差

ベルベレは、赤唐辛子の色と辛味だけを足す粉ではありません。2023年の調査では、家庭で作られるベルベレについて21種類のスパイスや香草が記録され、赤唐辛子を軸に、カルダモン、にんにく、しょうが、シナモン、フェヌグリークなどが使われていました。一方で、使う種類と量は好み、地域で手に入る材料、文化、経済事情によって変わります。つまり、フェヌグリークを入れたから完成、何種類そろえたから現地の正解、という判定はできません。

同じ理由で、料理名の英語表記も Doro Wat、Doro Wot など揺れます。ワットは煮込みの大きなカテゴリーで、鶏ならドロ、羊ならイェベグ、豆ならミスルと、主材料が変われば味の重心も変わります。家庭や地域の差を残したまま日本で作るなら、ベルベレの量を固定して正解を競うより、玉ねぎの濃度と唐辛子の強さを自分の食卓に合わせる方が筋が通ります。

インジェラの上で完成する食事

インジェラはテフ粉を発酵させて焼く、酸味のあるスポンジ状のフラットブレッドです。皿の代わりに大皿へ敷き、肉や豆のワットをのせ、ちぎった生地で料理とソースをすくいます。料理だけを小皿に盛るより、ソースを残さず食べる動作まで含めて一食の形になります。取材記事の復活祭の食卓では、ドロワットがインジェラの中央に置かれ、周囲に肉や豆の料理が並び、食後にはコーヒーを焙煎する儀礼へ移っていました。

日本では大皿を家族で囲む代わりに、最初から一人分ずつ盛っても構いません。ただ、インジェラがあるなら、ナイフとフォークで鶏だけを食べるより、生地を指先でちぎり、ソースをすくう食べ方を試すと料理の塩味と粘度を判断しやすくなります。インジェラを用意できない日に白ごはんを添えるのは妥協ではなく、味の軸を確かめるための現実的な代替です。

このレシピでは、現地の大鍋や丸鶏をそのまま移さず、骨付きもも肉、手作りのベルベレ、代替香草のニテルキベに置き換えました。再現の中心を「同じ材料を全件そろえること」ではなく、「赤いソースを玉ねぎで支え、食卓でパンやごはんに受け止めること」に置いた、日本の家庭向けの翻訳です。


よくある質問

ドロワットの保存容器と温め直した一皿
食べ切れないドロワットを浅い容器へ小分けし、冷蔵して温め直す

ベルベレの材料を全部そろえる必要はありますか?

必要ありません。初回は市販ベルベレを大さじ3使い、表示に合わせて塩とカイエンペッパーを調整する方が失敗しにくいです。自作する場合も、赤唐辛子、パプリカ、カルダモン、フェヌグリークなど、香りの軸を残せば成立します。全種類をそろえることより、粉を水で溶き、焦がさず玉ねぎへなじませることを優先してください。

フェヌグリークシードはどのくらい買えばよいですか?

このレシピだけなら小さじ1/4なので、大袋は余ります。カードの500g商品は、ベルベレを何度も自作したり、カレーなど別の料理でも使ったりする人向けです。1回分を試したい人は、少量パックや市販ベルベレを探してください。種はそのまま増量せず、苦味が出ないよう軽くつぶして使います。

鶏むね肉でも作れますか?

作れますが、骨付きもも肉より乾きやすいため、煮込みを25〜30分に短縮します。小さく切ると火が入りすぎやすいので、大きめのまま煮て、中心が75℃で1分以上になったら卵を加えます。骨付き肉の煮込みらしい盛りつけを優先するなら、もも肉を選んでください。

インジェラ以外には何を合わせればよいですか?

白ごはんが最も用意しやすい代替です。ナンやチャパティのような薄いパンでも、濃いソースを少しずつすくえます。インジェラの酸味や食感を再現するものではないので、付け合わせを変えた場合は「ドロワットのソースを主菜として楽しむ」と考えると味の違いに迷いません。

何日保存できますか?

食べ切る分だけ作るのが安全です。残りは清潔な浅い容器へ小分けし、室温に長く置かず冷蔵してください。家庭の冷却速度や扱いで安全性が変わるため、冷蔵日数を保証せず、翌日から2日程度を目安に早めに食べます。再加熱は中心まで75℃以上にし、におい、粘り、見た目に異常があれば食べずに捨ててください。卵は冷凍せず、冷凍する場合は鶏肉とソースだけを一食分に分けます。

辛さはどのくらいですか?

カイエンペッパー小さじ1なら、辛さの軸を残しつつ香りを確認しやすい配合です。唐辛子の強さは商品で変わるため、最初から「中辛」と決めつけず、ベルベレを少量なめてから追加量を決めます。辛味に敏感な人は小さじ1/2から始め、取り分け後に大人の皿だけミトミタを加えると調整できます。


主な参考リンク

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