葉の包みを開けると、ココナッツが固まっている
想像してみる。
日曜の昼、食卓の中央に黒く焼けた包みが置かれ、誰かが端のアルミホイルを折り返す。
湯気と一緒に、甘いココナッツの香りと青い葉の匂いが立つ。
スプーンを入れると、葉は煮たほうれん草よりなめらかで、中心のココナッツはソースというより、やわらかなクリームになっている。
これがサモアのパルサミ(Palusami)だ。
サモア観光局は、パルサミをココナッツクリームを葉で包んでウム(umu)で焼く料理として紹介している。
ウムは熱した石の上に食材を置き、葉で覆って蒸し焼きにする、サモアの地中炉だ。
日本で同じ石と葉の香りまで再現するのは難しい。
ただ、味の判断は意外に少ない。
食用の若い葉を選び、加糖していない濃いココナッツミルクを使い、中心まで葉をやわらかくする。
この三つを守れば、オーブンでも、葉を開いたときの濃厚な香りとねっとりした口当たりに近づけられる。
パルサミは副菜のように見えるが、現地では家族で分ける皿として登場する。
アメリカ領サモア国立公園の食文化資料は、サモアの食事が家族や地域の共同の食卓と結びつき、パルサミがタロイモの葉とココナッツクリームを使う料理だと説明している。
この料理を作る時、気になるのは「タロイモの葉がない」ことだろう。
次に気になるのは、「葉で包むだけなのに、なぜ時間がかかるのか」である。
答えは、葉を食べられる状態まで熱する時間にある。
サモアの食卓で、パルサミが包まれる理由
サモアの主食にはタロイモやパンノキがあり、ココナッツは果肉、水、油、クリームまで使われる。
サモア観光局の料理案内では、魚、豚肉、鶏肉、ラム、タロイモ、バナナなどをウムで調理し、熱した石と葉で煙と蒸気を閉じ込める様子が説明されている。
ウムは家庭用オーブンの単純な代用品ではない。
食材をまとめて仕上げ、家族や村の人へすぐに分ける場でもある。
サモア観光局は、日曜の教会の後に家族で食事をする to'ona'i や、結婚式、葬儀、洗礼などの fa'alavelave と食べ物の関係を紹介している。
大きな葉包みを一人分ずつ作るパルサミは、その食卓に置きやすい。
葉を一枚ずつ皿に敷くのではなく、何枚か重ねて器を作り、中にココナッツクリームを注ぐ。
包みを開ける動作まで含めて、食べる人が同じ皿を見ている料理になる。
サモアでタロイモの葉を指す語として lu'au が使われることもあるが、パルサミはその葉を使って仕上げた料理の名前だ。
ハワイの luau(宴会)と混同しやすいので、材料の葉と食事の場は分けて考えたい。
料理名の由来は、The Koko Samoaが、paluを「混ぜる」、samiを塩気の意味として説明している。
地域差も味の輪郭に残る。
Savai'iでは唐辛子、Manonoでは仕上げのライムを加える例があり、濃いココナッツを辛みや酸味で切る発想は、家庭の台所でも試しやすい。
サモア料理の資料では、基本のパルサミは葉、ココナッツクリーム、塩、玉ねぎで作られる。
魚、鶏肉、塩漬け肉、缶詰のコンビーフを加える家庭版もある。
アメリカ領サモア国立公園は、コンビーフを使う pisupo を近代に加わった食材として紹介している。
だから、コンビーフ入りだけが本場というわけではない。
植物性の葉包みを食べる家もあれば、手元にある魚や肉を入れて一皿にする家もある。
日本ではまず、肉を入れない基本形を作るのがよい。
ココナッツの甘さ、玉ねぎの柔らかい香り、葉の青い風味が分かるからだ。
ウムの煙を、家庭のオーブンでどこまで置き換えるか
サモアのウムは熱した石を使うため、オーブンの熱風だけでは葉に煙の香りがつかない。
それでもパルサミの輪郭は崩れにくい。
葉の中にココナッツを閉じ込め、蒸気でゆっくり火を通す構造が、料理の中心だからだ。
オーブンを使う時は、包みを水に浸けない。
鍋で煮るように水を張ると、葉の香りが薄まり、ココナッツが水っぽくなる。
一方で、包みの中が乾くほど加熱するのもよくない。
アルミホイルを二重にして端を閉じ、深い耐熱皿に並べて熱を逃がさない。
煙を少し足したいからといって、燻製液や甘いソースを加える必要はない。
葉を開けた時の青い香りを残すほうが、パルサミらしく食べられる。
この料理の味は、濃いソースの強さではなく、葉が吸い込んだココナッツの量で決まる。
ココナッツミルクが余ったら、ニューカレドニアのブーニャのような葉包みの蒸し焼きに回す方法もある。
魚や鶏肉を入れる料理では、中心温度と加熱時間が変わるので、パルサミの基本形と同じ時間で済ませない。
葉の硬さとココナッツの濃さを外さないコツ
若い葉を選ぶ
若い葉は葉脈が細く、包んだ後にやわらかくなりやすい。
ハワイ大学マノア校の資料も、緑色または淡い色の軸を持つ若い葉を選ぶよう説明している。
葉の端が黄ばんでいる、乾いて縮れている、軸が木のように硬いものは避けたい。
ライトタイプを使わない
ココナッツの脂肪分は、葉の青い苦みを包み、包みの中に濃度を残す。
ライトタイプや薄いココナッツミルクでは、焼いた後も液体が多く残る。
通常タイプの缶が見つからなければ、ココナッツクリームを水で薄めず、そのまま400ml使う。
包みの中身を増やしすぎない
1包みに100mlを超えて注ぐと、閉じる時に端から流れやすい。
液体が少なすぎると、葉が蒸される前に乾いてしまう。
包みの中央へ入れ、端を3cm残す形が扱いやすい。
開ける時に蒸気を逃がす
焼き上がりの包みは、皿の上でしばらく熱を持つ。
ホイルを一気に開くと、蒸気と熱いココナッツが手元へ向かう。
先に上面だけを開け、湯気が落ち着いてから葉を皿へ移す。
サモアらしさを残すアレンジ
基本形を作った後なら、中身を変える余地がある。
ただし、葉を食べられる状態まで加熱する条件は変わらない。
Pisupo風のコンビーフ入り
コンビーフ170gを汁気を切ってほぐし、ココナッツの合わせ液へ混ぜる。
塩は3gから始め、缶詰の塩味を見て足す。
肉の脂と塩気が加わるので、単体で食べるよりも、ゆでたタロイモやご飯と合わせやすくなる。
アメリカ領サモア国立公園の資料では、pisupoをサモア料理に加わった現代的な食材として紹介している。
魚を入れて海の皿にする
白身魚の切り身150gを1cm角に切り、玉ねぎと一緒に混ぜる。
魚の水分が出るため、ココナッツミルクは350mlに減らす。
中心まで火が通るよう、180度Cで60分焼き、最も厚い魚の部分が透明でなくなったことを確認する。
魚を入れた包みは、焼き上がったらその日のうちに食べる。
Savai'iを思わせる唐辛子とライム
サモアの島ごとの作り方として、唐辛子を加える例もある。
青唐辛子1本を細かく刻み、ライム果汁15mlをココナッツの合わせ液へ加える。
香りを強く出したい時は、塩少々と一緒に乳鉢で粗くつぶす。
買うのは、この酸味と辛みのある小分けを何度も作る人だけでよい。
包丁で十分なら、乳鉢は見送れる。
乳鉢を選ぶなら、リンク先で石材の材質と、すりこぎが付属するセット内容を確認したい。
開けた包みを、その日の食卓へ
焼き上がったパルサミは、白いご飯だけでなく、ゆでたタロイモ、パンノキ、青いバナナにも合わせられる。
ココナッツが濃いので、隣には塩味の軽い主食か、酸味のある生野菜が合う。

サモアの料理案内に出てくる oka は、生魚をココナッツ、ライム、玉ねぎ、トマトで和える料理だ。
パルサミと同じ皿に載せるなら、oka の酸味を少量添えるだけで重さが変わる。
日本の食卓では、焼いた魚や蒸した鶏肉を別皿に置き、パルサミを濃いソースのように使ってもよい。
ただし、パルサミの中へ魚を入れる場合は、別の料理として中心まで火を通す。
残りは粗熱を取ってから、浅い密閉容器へ移して冷蔵する。
冷蔵で2日から3日を目安に食べ切り、再加熱は蓋やラップをして160度Cで15分ほど、中心が75度C以上になるまで温める。
高温で一気に温めるとココナッツが分離しやすい。
冷凍するなら、葉包みのままではなく、中身を外して一食分ずつ包む。
食感は落ちるので、解凍後はご飯にのせるより、スープや煮込みの仕上げに回すほうが扱いやすい。
よくある質問
タロイモの葉が見つからない時は、何で代用できますか?
大きなほうれん草の葉が最も手に入りやすい。
葉を何枚も重ねて器を作り、アルミホイルで包んで同じ温度で焼く。
ただし、タロイモの葉のような土っぽい香りや厚みは出ない。
キャベツは葉が破れにくい一方、甘みが強く、パルサミよりロールキャベツに近い味になるので、代替の第一候補にはしにくい。
ココナッツミルクとココナッツクリームは同じですか?
製品名は国やブランドで揺れる。
パルサミでは、無糖で脂肪分が高く、缶を傾けた時に水だけが先に出ないものを選ぶ。
ココナッツミルクしかない場合も、ライトタイプでなければ使える。
液体が薄い時は、量を増やさず、焼き上がりを10分追加して水分を飛ばす。
葉の下処理をしても喉がいがらっぽい時は?
食用葉の種類、若さ、加熱時間を見直す。
葉の軸までやわらかくなる前に食べず、180度Cで10分ずつ追加加熱する。
正体の分からない葉を使った場合は、追加加熱で解決しようとせず廃棄する。
ハワイ大学マノア校は、タロイモの葉を生で食べず、ゆでて水を切り、もう一度加熱するよう案内している。
コンビーフは必須ですか?
必須ではない。
葉とココナッツだけの基本形は植物性で、魚や肉を加えるのは家庭ごとの変化だ。
コンビーフを入れるなら170gから始め、塩を減らして味を見る。
前日に包んでおけますか?
包んだ状態で冷蔵し、24時間以内に焼く方法は可能だ。
焼く20分前に冷蔵庫から出し、冷たいまま高温のオーブンへ入れない。
葉の中心まで温まる時間が伸びるため、通常より10分長く焼いて状態を確認する。
あわせて作りたい料理
- ニューカレドニアのブーニャの作り方:葉で包んだ鶏肉と根菜を、ココナッツで蒸し焼きにする料理。
- フィリピンのラウインの作り方:タロイモの葉とココナッツミルクを煮込む、葉の扱いが近い料理。
- ブラジルのムケッカ・バイアーナの作り方:ココナッツミルクと魚を使う、海の香りを並べたい時の一皿。










