コシード・マドリレーニョ。ひよこ豆、チョリソ、骨付き肉が大きな鍋で煮込まれている
🔪下準備30分
🔥調理3時間
🍽️分量6
🌍料理スペイン料理

コシード・マドリレーニョの作り方|マドリードの煮込み

約30分で読めます世界ごはん紀行編集部
Cooking flow

作り方を先に見る

STEP 11 / 5

ひよこ豆を一晩水に浸す(前日準備

手順1: ひよこ豆を一晩水に浸す(前日準備

10時間以上)

乾燥ひよこ豆をたっぷりの水(豆の4倍量)に浸し、一晩(10時間以上)置きます。スペインの料理人はこの浸水に「ぬるま湯」を使い、小さじ1の重曹を加えることがあります。重曹は豆の皮を柔らかくし、煮込み時間を短縮する効果がありますが、入れすぎると風味が損なわれるので注意してください。

マドリードの名店「La Bola」(1870年創業)のシェフは、「コシードの仕上がりは前夜の浸水で8割決まる」と語っています。十分に水を吸ったひよこ豆は煮崩れしにくく、クリーミーでホクホクした食感になります。

STEP 22 / 5

大鍋に肉と水を入れて火にかける(20分)

手順2: 大鍋に肉と水を入れて火にかける(20分)

大きな鍋(8リットル以上)に水3リットルを入れ、牛すね肉、鶏もも肉、豚バラ肉、骨髄、生ハムの骨を入れます。丸ごとの玉ねぎとにんにくも加えます。強火にかけて沸騰させ、浮いてくるアクを丁寧にすくい取ります。

コシードの澄んだスープを作るには、このアク取りが命です。スペインでは「エスプマール(espumar)」と呼ばれるこの工程に最低15分をかけます。アクが出なくなったら弱火に落とします。

強火で長時間沸騰させると、スープが白く濁ります。コシードのスープは澄んだ琥珀色が理想で、弱火でコトコトと煮ることが鍵です。マドリードのコシード名人は「泡がぽこぽこと一つずつ浮かぶ程度の火加減」と表現します。

STEP 33 / 5

ひよこ豆を加えて煮込む(2時間)

手順3: ひよこ豆を加えて煮込む(2時間)

アクを取り終えたら、浸水して水を切ったひよこ豆を鍋に加えます。ここで重要なのは、ひよこ豆を布の袋(ガーゼや晒し布)に入れてから鍋に投入すること。これはスペインの伝統的な手法で、後でひよこ豆だけを簡単に取り出せるようにするためです。袋がなければそのまま入れても構いませんが、盛り付け時に仕分ける手間が増えます。

弱火で2時間煮込みます。途中で水位が下がったら、必ずお湯を足してください。冷たい水を加えるとひよこ豆の皮が硬くなります。煮上がりは、ひよこ豆を指で押すとほくっと潰れ、牛すね肉に竹串が抵抗なく入る状態が目安です。これはスペイン語で「アスースタール(asustar / 驚かせる)」と呼ばれる現象で、マドリードのコシード愛好家たちが口を揃えて警告するポイントです。

STEP 44 / 5

野菜とソーセージを加える(30分)

手順4: 野菜とソーセージを加える(30分)

煮込み開始から2時間後、じゃがいも(皮をむいて4等分)、にんじん(3cm厚の輪切り)、かぶ(4等分)を鍋に加えます。同時にチョリソとモルシージャも入れます。

キャベツは別鍋で下茹でします。4等分に切り、沸騰した塩水で5分茹でてザルに上げ、水気を切ります。下茹でしたキャベツはコシードの鍋に加えてさらに20分煮込みます。キャベツを下茹でする理由は、スープの色を濁らせないためと、キャベツの青臭さを除くためです。

チョリソのパプリカの赤い油がスープに溶け出し、ひよこ豆がほんのりオレンジ色に染まります。この色の変化がコシードの美しさの一つです。

STEP 55 / 5

三幕に分けて盛り付ける(10分)

手順5: 三幕に分けて盛り付ける(10分)

ここからがコシードの真骨頂、トレス・ブエルコス(三回のひっくり返し) です。

第一幕(プリメル・ブエルコ)— スープ: 鍋からスープを漉し取り、小鍋に移して中火で軽く沸かします。フィデオ(極細パスタ)を加え、3分茹で、麺の中心にわずかに芯が残り、スープが透明感のある琥珀色のまま仕上がる程度で火を止めます。深皿に盛ってテーブルへ。体の芯から温まる、滋味深いスープです。

第二幕(セグンド・ブエルコ)— ひよこ豆と野菜: 布袋からひよこ豆を取り出し、じゃがいも、にんじん、かぶ、キャベツとともに大皿に盛ります。スープの旨みを吸ったひよこ豆は、この一皿だけで完全な食事になるほどの満足感です。

第三幕(テルセル・ブエルコ)— 肉: 牛すね肉、鶏肉、豚バラ肉を食べやすい4〜5cm幅に切り分け、チョリソとモルシージャを1cm厚にスライスして大皿に盛ります。肉は繊維がほどけ、チョリソの赤い脂が皿ににじむ状態が食べ頃です。骨髄はスプーンですくってパンに塗って食べます。マドリードの食堂では、骨髄は「貧しい者のバター」と呼ばれ、コシードの隠れた主役です。

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Ingredients

材料を分けて見る

8品目

主要食材

材料 分量 代替・備考
乾燥ひよこ豆 400g 前日から一晩浸水必須
牛すね肉(骨付き) 500g ブロック肉でも可
鶏もも肉(骨付き) 2本 —
豚バラ肉(塊) 300g ベーコンブロックで代用可
チョリソ 2本 スペイン産パプリカ入りを推奨
モルシージャ(血のソーセージ) 1本 省略可(入手困難の場合)
骨髄(牛の管骨) 2本 省略可
生ハムの骨(hueso de jamón) 1個 省略可(あれば風味が格段に上がる)
6品目

野菜

材料 分量 代替・備考
じゃがいも 4個(大) —
にんじん 2本 —
キャベツ 1/2個 ちぢみほうれん草でも可
かぶ 2個 大根200gで代用可
玉ねぎ 1個(丸ごと) —
にんにく 4片 —
2品目

仕上げ(第一幕用)

材料 分量 代替・備考
フィデオ(極細パスタ) 100g カッペリーニまたはそうめんで代用可
塩 適量 —
チョリソとモルシージャの入手方法

スペイン産チョリソは成城石井やカルディで500〜800円程度で購入できます。メキシカンチョリソ(生ソーセージ)とは別物なので注意してください。スペイン産チョリソはパプリカで赤く色づけされた乾燥・半乾燥ソーセージです。モルシージャは日本での入手が困難ですが、ネット通販で冷凍品が2,000〜3,000円程度で見つかることがあります。なくても十分に美味しいコシードが作れます。骨髄と生ハムの骨はハラル食材店や精肉店で取り寄せ可能です。

コシードの材料。ひよこ豆、チョリソ、牛すね肉、鶏もも肉、キャベツ
コシード・マドリレーニョの材料一式。ひよこ豆を中心に、肉、ソーセージ、野菜が勢揃い
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材料表の分量6人分

表内の数値を目安として再計算します。塩、辛味、油は味を見ながら調整してください。

栄養情報 1人分の目安
113kcal
エネルギー
7.0g
タンパク質
4.7g
脂質
10.3g
炭水化物
2.3g
食物繊維
120mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。
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材料からそろえる、味の決め手

買い出しガイド

首都マドリードが誇る「三幕の煮込み劇場」

マドリードの冬。石畳の路地を吹き抜ける冷たい風から逃げ込んだタベルナ(居酒屋)のカウンターに、まず温かいスープが運ばれてきます。次にひよこ豆と野菜の皿。そして最後に、チョリソ、モルシージャ(血のソーセージ)、牛肉、鶏肉がずらりと並んだ肉の大皿。この三幕構成こそが、マドリードが世界に誇るコシード・マドリレーニョ(Cocido Madrileño)の正式な食べ方です。

コシード・マドリレーニョ は、乾燥ひよこ豆を主軸に、数種類の肉、骨髄、野菜、ソーセージを一つの大鍋でゆっくりと煮込み、3段階(トレス・ブエルコス)に分けて順番に食べるマドリードの国民的煮込み料理です。「ブエルコ(vuelco)」とは「ひっくり返す」の意味で、鍋の中身を皿にひっくり返して盛る動作に由来します。

コシードとは

コシード(Cocido)はスペイン語で「煮込んだもの」を意味し、スペイン各地にその土地ならではのコシードが存在する。マドリレーニョ(マドリード風)が最も有名で、その起源は中世のセファルディ系ユダヤ人の安息日料理「アダフィナ(adafina)」にあるとされる。もともとは豚肉を含まないコーシャー料理だったが、レコンキスタ(国土回復運動)以降に豚肉、チョリソ、モルシージャが加えられ、現在の姿になった。ギリシャのファソラーダが白いんげん豆の菜食スープであるのに対し、コシードはひよこ豆と肉の重厚な饗宴。

日本語で「コシード」を検索しても、スペイン旅行ガイドに数行の紹介がある程度です。英語圏ではCulinary Backstreetsがマドリードの名店シェフHuanjo Lopez氏の「七幕のコシード」として詳細なレシピを公開し、spain.info(スペイン政府観光局)も公式レシピを掲載していますが、日本語で三段階の食べ方まで踏み込んだ記事はほぼ存在しません。この記事では、マドリードの食堂で出される伝統的なスタイルを忠実に再現しつつ、日本のスーパーで手に入る食材での代替方法も詳しく解説します。


調理のコツ

ひよこ豆には必ずお湯を足せ

煮込み中に水位が下がってきたとき、冷たい水を足すと「アスースタール(驚かせる)」と呼ばれる現象でひよこ豆の皮が硬くなります。必ず沸騰したお湯を足してください。マドリードの伝説的なコシード店「La Bola」では、別の小鍋に常にお湯を沸かしておき、必要に応じて足す方法を150年以上続けています。

骨髄を侮るな

牛の管骨から取れる骨髄は、コシードの風味の土台です。骨髄がスープに溶け出すことで、ゼラチン質のコクと深みが加わります。日本のスーパーでは手に入りにくいですが、精肉店に取り寄せを頼むか、ネット通販で牛骨を購入できます。骨髄を入れるのと入れないのとでは、スープの質が別物になります。

キャベツは必ず別茹で

キャベツを直接コシードの鍋に入れると、スープが緑色に濁り、キャベツ臭が肉とひよこ豆に移ります。別鍋で5分下茹でしてからコシードの鍋に加えることで、スープの澄んだ色を保ちつつ、キャベツ自体も柔らかく甘く仕上がります。

前日に作って翌日温め直せ

ギリシャのファソラーダと同様に、コシードも翌日の方が美味しくなる料理です。ひよこ豆がスープの旨みをさらに吸い込み、肉の繊維がほぐれて柔らかくなります。マドリードの家庭では日曜に大鍋で作り、月曜の昼食にも食べるのが定番です。

コシードのスープにフィデオ(極細パスタ)が入った第一幕
第一幕のスープ。琥珀色の透き通ったスープにフィデオが浮かぶ。体の芯から温まるマドリードの冬の味

アレンジ・バリエーション

コシード・アンダルス(アンダルシア風)

スペイン南部アンダルシアのコシードは、いんげん豆をひよこ豆と併用し、カボチャを加えるのが特徴です。また、肉よりも野菜の比率が高く、仕上げにクミンとパプリカを効かせます。モロッコのタジンの影響を受けた北アフリカ的な風味が感じられます。

プチェロ(カタルーニャ版)

カタルーニャ地方の「エスクデリャ・イ・カルン・ドリャ」は、コシードの親戚で、大きな肉団子(ピロタ)が入るのが特徴。パスタの代わりにガレット(カタルーニャ風極大パスタ)をスープに加えます。クリスマスの伝統料理でもあります。

圧力鍋で時短版

浸水したひよこ豆と全ての肉類、丸ごとの玉ねぎ、にんにくを圧力鍋に入れ、水2リットルを注ぎ、高圧で45分加熱します。自然減圧後に蓋を開け、野菜とソーセージを加えて通常の鍋で20分煮込みます。煮込み時間が1/3に短縮されますが、スープの澄んだ色を保つのはやや難しくなります。

ロパ・ビエハ風リメイク

翌日のコシードの残り肉をほぐし、トマトソースとパプリカで炒めるとロパ・ビエハ(古い服)になります。キューバのロパビエハはこのスペインのリメイク料理が大西洋を渡ったものとされています。余ったひよこ豆はサラダに混ぜても美味しいです。

アンダルシア風コシードのバリエーション
コシードのバリエーション。スペイン各地にその土地ならではのコシードが存在する

この料理の背景

セファルディのアダフィナからコシードへ

コシードの歴史は、中世イベリア半島のセファルディ系ユダヤ人コミュニティに遡ります。安息日(シャバット)には火を使った調理が禁じられるため、金曜の日没前に全ての食材を鍋に入れ、残り火でゆっくりと一晩煮込む料理「アダフィナ(adafina)」が生まれました。

Food & History誌(2012年)に掲載されたMaría de los Ángeles Pérez Samper教授の研究によると、1492年のユダヤ人追放令以降、改宗ユダヤ人(コンベルソ)たちは「キリスト教徒であること」を証明するためにアダフィナに豚肉やチョリソを加えるようになりました。こうして豚肉入りのアダフィナがコシードへと変容し、やがてスペイン全土の国民食に上り詰めました。皮肉にも、宗教的迫害が一つの偉大な料理を生み出したのです。

マドリードの食文化と「水曜のコシード」

マドリードでは伝統的に水曜日がコシードの日とされていました。19世紀のマドリードでは、多くの家庭とタベルナが水曜の昼にコシードを供するのが慣習で、フランスの旅行作家テオフィル・ゴーティエは1840年の旅行記Voyage en Espagneで「マドリードの水曜日は街全体がひよこ豆の匂いに包まれる」と書いています。

この習慣は20世紀半ばまで続きましたが、現代のマドリードではコシードは主に冬の日曜日のランチとして食べられています。家族が集まる日曜の食卓に、大鍋のコシードが3段階に分けて供される光景は、マドリードの食文化の象徴です。

トレス・ブエルコスの哲学

3段階に分けて食べる「トレス・ブエルコス」は単なる作法ではなく、一つの鍋から三つの異なる料理を引き出す合理性の表現です。スープで体を温め、ひよこ豆と野菜で腹を満たし、肉で満足感を極大化する。この構成は、食材を一切無駄にしないという中世の「倹約の美学」に根ざしています。

Culinary Backstreetsのマドリード特派員Daniel Medina氏は「コシードはスペインのスロークッキングの哲学そのものだ。一つの鍋が朝から夕方まで火にかかり、一つの食事で三つの喜びを生む。これ以上効率的な料理は存在しない」と述べています。

コシードの経済的位置づけ

マドリード市内には現在も約200軒のコシード専門レストランが営業しており、冬季(10月〜3月)のランチタイムに年間推定100万食以上のコシードが提供されている。一人前の価格は伝統的なタベルナで15〜25ユーロ、高級レストランで30〜50ユーロ。マドリード市観光局は毎年2月に「ルタ・デル・コシード(コシードの道)」イベントを開催し、市内の飲食店がオリジナルのコシードを競い合う。

マドリードのタベルナでコシードが供される伝統的な風景
マドリードのタベルナ。冬の日曜日、家族連れが大鍋のコシードを囲む風景は、首都の食文化の原風景

合わせて読みたい

コシードはヨーロッパの「大鍋煮込み」文化の頂点の一つ。周辺国の煮込み料理もぜひお試しください。

大西洋を渡ったコシードの末裔も合わせてどうぞ。


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よくある質問

チョリソやモルシージャが手に入らない場合は?

チョリソの代わりに、パプリカパウダーを揉み込んだ粗挽きソーセージで代用できます。フランクフルトソーセージ2本にパプリカ小さじ2とにんにく1片のすりおろしをまぶして30分置くと、簡易チョリソ風になります。モルシージャは省略しても問題ありません。多くのマドリード市民も「モルシージャは好みが分かれる」と認めています。

圧力鍋で作れますか?

作れます。浸水したひよこ豆と全ての肉類を圧力鍋に入れ、高圧で45分加熱してください。自然減圧後に野菜とソーセージを加え、蓋を開けた状態で20分煮込みます。スープの透明度はやや落ちますが、味は遜色ありません。スペインでは「オジャ・エクスプレス(圧力鍋)」でのコシードは忙しい現代人の定番です。

残ったコシードの保存方法は?

スープ、ひよこ豆+野菜、肉を分けて保存容器に入れ、冷蔵で3日間、冷凍で1ヶ月持ちます。翌日の昼食には温め直すだけで十分美味しく、むしろ「二日目のコシード」を好む人も多いです。余った肉はほぐしてコロッケの具にする「コキータス・デ・コシード」がマドリードの定番リメイクです。


栄養成分(6人分のうち1食分)

コシードはひよこ豆の植物性たんぱく質と食物繊維に加え、複数の肉からの動物性たんぱく質を含む、栄養密度の高い食事です。レバノンのムジャッダラが豆と穀物でたんぱく質を補完するのに対し、コシードは豆と肉の両方で圧倒的なたんぱく質量を確保します。

栄養素 含有量
エネルギー 680kcal
たんぱく質 42g
脂質 28g
炭水化物 62g
食物繊維 14g
ナトリウム 720mg
鉄分 6.8mg
カルシウム 120mg

主な参考リンク

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