かぼちゃを開くと、甘い米がこぼれる
オーブンからかぼちゃを出すと、最初に立つのは焼き芋に近い甘い香りです。そこへバター、はちみつ、干しあんず、レーズン、カルダモンが重なり、切り込みを入れた瞬間に米がゆっくりこぼれます。アルメニアのガパマ(Ghapama / ղափամա)は、丸いかぼちゃを器にして、米、ドライフルーツ、ナッツを蒸し焼きにする祝祭料理です。
Smithsonian Folklife Festival の料理実演では、ガパマはクリスマスに作られることが多い詰めかぼちゃとして紹介され、米、ドライフルーツ、ナッツ、バター、はちみつ、シナモンを詰め、焼き上げたかぼちゃを筋に沿って花のように開いて出します。Armeniapedia と The Armenian Kitchen でも、新年からアルメニアのクリスマスの時期に食べる家庭料理として、半分火を入れた米を果物と合わせ、かぼちゃにゆるく詰める作り方が出てきます。
日本で作る時の難所は、かぼちゃ選びと米の水分です。現地レシピは2から3kgの丸いパンプキンを想定することがありますが、日本の家庭用オーブンでは大きすぎると中心まで火が入りません。このレシピでは、1.4から1.8kgの小ぶりなかぼちゃを使い、米は先に半ゆでします。炊き込みご飯を詰めるのではなく、芯を残した米をかぼちゃの中で仕上げる感覚です。
守りたいのは、かぼちゃの甘い器、粒が残る米、干し果物の酸味、ナッツの歯ざわり、はちみつとバターの香りです。サフランは現地の標準材料とは限りませんが、米の香りを立てたい家庭版として少量だけ使います。なくても成立しますが、入れるなら色を濃くするためではなく、湯で戻して香りを米に移す程度にします。
日本の台所で組み直す
かぼちゃの中で米を完全に炊こうとすると、果物の糖分とバターが底にたまり、米が重くなります。米は鍋で7割ほど火を入れ、詰め物はフライパンで水分を飛ばし、かぼちゃの中では香りと蒸気を吸わせます。
| 見るポイント | 現地で語られる軸 | 日本で作るときの落としどころ |
|---|---|---|
| かぼちゃ | 2から3kgの丸い黄色いパンプキン | 1.4から1.8kgの小ぶりなかぼちゃ。皮が硬すぎるものは避ける |
| 米 | 長粒米を半分火通りにして詰める | バスマティ米を7分ゆで、中心に白い芯を残す |
| 果物 | レーズン、干しあんず、プルーン、チェリーなど | 干しあんず、レーズン、プルーンで酸味と甘みを分ける |
| 油脂と甘み | ギー、バター、はちみつ | 無塩バターとはちみつ。焦げやすいので詰め物を煮詰めない |
| 焼き方 | 325から375度F前後、かぼちゃが柔らかくなるまで | 180度Cで蒸し焼き。竹串が抵抗なく入り、皮が少ししわ寄るまで |
買い出しで迷うもの
かぼちゃ、バター、はちみつ、ドライフルーツは近所のスーパーで探せます。通販で見る価値があるのは、米粒を軽く仕上げるバスマティ米、少量で香りが変わるサフラン、粉っぽさを出しにくいカルダモンホールです。

バスマティ米は、かぼちゃの中で米粒をさらっと残すための材料です。日本米でも作れますが、冷めると粘りやすく、甘い炊き込みご飯に寄ります。余ったバスマティ米はカブリ・パラウやアミチにも回せます。
サフランはガパマの必須材料ではありません。ただ、はちみつとバターだけでは甘い香りに寄るので、米を少し祝祭料理らしく見せたい時に少量だけ使います。色を濃くするために増やすと薬草っぽくなるため、0.08gで十分です。
カルダモンは粉でも作れますが、ホールを割ると青い香りが出て、ドライフルーツの甘さが重くなりません。余ったホールは、牛乳で煮るドゥードパクや中東の米料理にも使いやすいです。
失敗しやすいところ
ガパマは、味つけよりも水分管理で仕上がりが変わります。かぼちゃが大きいほど豪華ですが、家庭用オーブンでは焼き時間が読みにくくなります。初回は小ぶりなかぼちゃで、米を詰めすぎない方が安定します。

| 状態 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 米がべたつく | 米をゆですぎた、日本米を同量使った | バスマティ米は7分、日本米は6分で止める |
| 底に汁がたまる | 果物を戻しすぎた、詰め物の水分を飛ばしていない | フライパンで弱火4分混ぜ、底に汁が残らない状態にする |
| かぼちゃが割れる | 大きく切りすぎた、壁が薄い | ふたは直径10から12cm、果肉の壁は1.5cm以上残す |
| 表面が焦げる | ホイルなしで長く焼いた | 最初の45分はホイルをかけ、後半だけ焼き色を見る |
| 果肉が硬い | かぼちゃが大きい、焼き時間が短い | 180度Cのまま10分追加し、竹串で厚い部分を確認する |
甘さが強すぎる時は、次回ははちみつを25gに減らし、オレンジの皮を4gへ増やします。香りが平板な時は、カルダモンを粉で足すより、ホールを割って種をつぶす方が軽く仕上がります。シナモンを増やすと菓子寄りになるので、米料理として食べたい日は控えめが向いています。
食べ方と献立
ガパマは大皿の中央に置き、食卓で切り開くと一番楽しい料理です。切った後は、皮だけを残して米をすくうのではなく、柔らかくなったかぼちゃの果肉を一緒に皿へ移します。

甘い米料理なので、横に置きたいのは塩気と酸味です。水切りヨーグルト120gに塩1g、レモン汁10ml、刻んだパセリ5gを混ぜたソースを添えると、バターとはちみつの重さが切れます。薄いラヴァシュやピタを添え、米とかぼちゃを少しのせて食べるのも合います。
アルメニア料理の献立で見るなら、鶏と小麦を静かに練るハリッサの横に小さく置くと、塩味と甘味の対比が出ます。丸鶏を使うアミチとは、米とドライフルーツを肉に詰めるか、かぼちゃに詰めるかの違いとして読むと面白いです。米料理の香りを広げるなら、アゼルバイジャンのシャー・プロフも近い軸にあります。
| 合わせるもの | 役割 | 日本での置き換え |
|---|---|---|
| ヨーグルトソース | 甘さを切る | 水切りヨーグルト、レモン、塩 |
| ラヴァシュ | 米と果肉を包む | ピタ、薄いトルティーヤ |
| 香草 | バターの重さを軽くする | パセリ、ディル、ミント |
| 塩味の肉料理 | 甘い米を主菜に近づける | ローストチキン、塩味の煮込み |
保存と温め直し
ガパマは焼きたてが一番ですが、4人で食べ切れない時は、かぼちゃと詰め物を分けて保存すると翌日も扱いやすいです。丸ごと冷蔵すると中心が冷めにくく、米が水分を吸いすぎます。

| 保存方法 | 目安 | 温め直し |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 2日 | 耐熱皿に移し、水15mlをふって180度Cで10分 |
| 冷凍 | 詰め物だけ3週間 | 冷蔵庫で半日解凍し、フライパン弱火で5分 |
| 弁当 | 非推奨 | 米と果物に水分が多いので、常温持ち歩きは避ける |
翌日に甘さが強く感じる時は、温め直した後にレモン汁5mlを表面へ落とします。冷たいまま食べるとバターが固く、米の香りも閉じるので、少なくとも電子レンジ600Wで90秒温め、湯気が立つ状態に戻してから食べます。
よくある質問
日本のかぼちゃでも作れますか?
作れます。むしろ家庭用オーブンでは、日本の小ぶりなかぼちゃの方が扱いやすいです。ただし、ほくほくした品種は水分が少ないので、焼く時に耐熱皿へ水を入れ、蒸し焼きにします。皮がとても硬いものは、切り開く時に崩れにくい反面、焼き時間が長くなります。
日本米で作るならどう変えますか?
米を160gに減らし、下ゆでを6分で止めます。日本米は粘りが出やすいので、ゆでた後に水で洗わず、ざるで3分しっかり水気を切ります。詰め物を炒める時も、弱火で米粒にバターを絡めるだけにし、木べらで押しつぶさないようにします。
サフランなしでもよいですか?
よいです。サフランは香りの補助で、料理の骨格はかぼちゃ、米、ドライフルーツ、ナッツ、はちみつです。代わりにターメリックを入れると土っぽい香りが出るので、黄色を足す目的では使いません。サフランを抜くなら、カルダモンとオレンジの皮を少し丁寧に香らせます。
肉を入れるガパマもありますか?
あります。Smithsonian の紹介でも、地域によって肉を入れる形や、詰め物にさらにかぼちゃを加える形が触れられています。このレシピは、甘い米と果物を中心にした家庭版です。肉入りにする場合は火通りと保存の考え方が変わるため、初回は肉なしでかぼちゃと米の水分をつかむ方が失敗しません。












