油の上に白いレースを描く菓子
アースミを作る日は、揚げ物なのに最初に見るのは泡ではなく、細い白い線です。指の間から米粉の生地を落とすと、熱い油の表面にくねくねした線が広がり、数十秒で薄い網になります。そこを折りたたむと、皿の上に小さな白いレースが重なります。最後にピンクの糖蜜を細く引くと、ようやくスリランカの祝い菓子らしい顔になります。
アースミは、シンハラ語で ආස්මි、英語では Aasmi と書かれるスリランカの伝統菓子です。シンハラ・タミル新年の食卓、結婚式、誕生日などで出される甘い揚げ菓子として紹介されます。米粉とココナッツミルクの生地に、現地ではダウルクルンドゥと呼ばれるシナモン葉の汁を加え、粘りを作ってから油へ細く落とすのが特徴です。
日本で作るときに難しいのは、材料そのものより「粘り」と「油温」です。ダウルクルンドゥの葉は手に入りにくいので、この記事ではオクラの粘液を使います。オクラは現地レシピでも代替として使われることがあり、日本の台所ではいちばん現実的です。生地がゆるすぎると線が切れ、濃すぎると白い塊になります。油が低いとべたつき、高いと網になる前に色づきます。
ビビッカンが黒糖とココナッツの重い焼き菓子なら、アースミはもっと軽く、手先の動きが見える菓子です。キリバットやホッパーと同じく米とココナッツが土台ですが、食感はまるで別物。祝いの日の甘い皿として、小さく割って紅茶に合わせるとよく合います。
守るのは、米粉とココナッツミルクで白い生地を作ること、粘りで細い線を保つこと、一度揚げて休ませ、もう一度揚げて軽くすること、最後に濃い糖蜜を線で引くことです。ダウルクルンドゥの香りは再現しきれませんが、オクラの粘りを使うと形の再現性が上がります。
アースミとはどんな菓子か

アースミは、米粉とココナッツミルクで作った生地を、油の中へ細く落として網状に揚げる菓子です。Lakpuraの解説では、シンハラ・タミル新年、結婚式、誕生日で出される菓子とされ、米粉、ココナッツミルク、ダウルクルンドゥの葉の汁を使い、休ませた後に二度揚げして色つきの糖蜜をかける流れが示されています。
ここで大事なのは、アースミが「ただの揚げクレープ」ではないことです。油に落とす線が細いほど穴が多くなり、二度揚げで軽くなります。粉を厚く流すと、見た目は似ていても、噛んだ瞬間にもちっと重くなります。白く、軽く、穴が多い。この三つがそろうと、アースミらしい食感に近づきます。
| 守る要素 | 現地の材料・方法 | 日本での現実的な方法 |
|---|---|---|
| 粉 | 細かい米粉 | 製菓用米粉。上新粉ならふるって使う |
| 液体 | ココナッツミルク | 缶詰の濃いココナッツミルク |
| 粘り | ダウルクルンドゥの葉の汁 | オクラを水で揉んだ粘液 |
| 形 | 専用の穴あき器具や指 | 指、絞り袋、細口ボトルで代用 |
| 仕上げ | 色つきの糖蜜 | 砂糖、水、食用色素少量で作る |
専用の漏斗があると線を落としやすいですが、家庭では指の間から落とす方法が一番始めやすいです。熱い油の上で作業するので、初回は大きな円を狙わず、直径14cm前後の小さめに作ります。形が少し不揃いでも、穴が多く、油切れがよければ成功です。
このレシピは米粉、ココナッツ、オクラ、砂糖、食用色素、揚げ油を使います。米粉や食用色素は製造ラインで小麦、乳、ナッツを扱うことがあるため、アレルギーがある場合は表示を確認してください。揚げ油は165度C以上で扱うため、手や衣服を油面に近づけすぎず、子どもがいる台所では鍋の位置を奥にしてください。
買い出しで見るもの
アースミは、米粉、ココナッツミルク、油温の3つで失敗率が変わります。砂糖やオクラは近所で十分ですが、米粉は粒の細かさ、ココナッツミルクは料理用の濃さを見てください。揚げ物用温度計は、線の細い菓子ほど役に立ちます。
米粉は粒が細かいほど、細い線で落ち、穴が詰まりにくくなります。上新粉で作る場合も、ざるで一度ふるうと大きな粒が減り、油の上で切れにくくなります。
ココナッツミルクは料理用の缶詰を使います。薄い飲料タイプにすると米粉の香りだけが前に出て、スリランカ菓子らしい甘い脂の香りが弱くなります。
アースミは油温の幅が狭い菓子です。165度Cを下回ると油を吸い、180度C近くまで上がると線が白いまま固まる前に色づきます。温度計がない場合は、小さな生地を落としてすぐ細かい泡が出るが、茶色くならない状態を目安にします。
失敗原因と直し方

アースミの失敗は、形を見るとかなり分かります。穴が少ないなら生地が濃いか、落とす線が太い。破れるなら水分が多いか、折るのが早い。油っぽいなら温度が低い。味を変える前に、まず生地の濃度と油温を直します。
| 状態 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 線が太く、穴が少ない | 生地が濃い、指から落とす量が多い | 水を小さじ2足し、指を小さく動かす |
| 油の中で線が切れる | 粘り不足、水分が多すぎる | オクラ粘液を小さじ2足す。米粉を小さじ2混ぜる |
| 白い網が破れる | 折るのが早い、網が薄すぎる | 20秒待ってから折る。線を少し重ねる |
| 油っぽく重い | 油温が低い | 165度Cまで戻してから次を揚げる |
| 黄色く硬い | 油温が高い、揚げすぎ | 170度C未満に落とし、二度揚げを短くする |
| 糖蜜が固まって白い網をつぶす | 煮詰めすぎ | 湯を小さじ1足して弱火で戻す |
| 青い香りが残る | オクラの粒を入れた | 粘液だけを使い、刻みオクラは入れない |
初回に一番直しやすいのは、1枚ごとに生地を小さく調整することです。全部を油へ入れる前に、小さな試し網を1枚作ってください。5cmほどの網で線がつながるか、穴が残るか、油を吸わないかを見ると、本番の8枚が安定します。
現地の食べ方と献立へのつなぎ方
アースミは、熱々で食べる揚げ物というより、冷ましてから甘い線を引く祝い菓子です。糖蜜が表面で落ち着くまで10分ほど置くと、割った時に蜜が手につきにくくなります。濃いセイロンティー、ミルクティー、または無糖の紅茶と合わせると、砂糖の甘さが重くなりません。
スリランカの祝い膳として考えるなら、朝はキリバットにルヌミリスを添え、甘い皿にアースミを置く流れが自然です。食後の菓子なら、ココナッツとカレーリーフが香るククルマスカレーや、鉄板で刻むコットゥのあとに、小さく割って出すと食卓の余韻が変わります。
東南アジアの米粉菓子に慣れている人は、タイのカノムタンと比べると分かりやすいです。カノムタンは蒸してふんわり、アースミは揚げて穴を作る。どちらも米と椰子の香りを使いますが、油の上で線を描くアースミの方が、手仕事の表情がはっきり出ます。
保存と作り置き

糖蜜を引いたアースミは、完全に乾いてから保存します。湿ったまま重ねると、白い網がやわらかくなり、穴がつぶれます。クッキングシートを敷いた保存容器に1段で入れ、涼しい場所なら当日から翌日、冷蔵なら2日を目安にします。
冷蔵すると油脂が固まり、食感が少し重くなります。食べる20分前に室温へ出し、湿気が気になる場合はオーブントースターを使わず、低温のオーブン100度Cで3分だけ乾かします。トースターの強い上火は糖蜜だけを焦がしやすいので避けてください。
糖蜜をかける前の二度揚げ済みアースミは、紙を挟んで翌日まで保存できます。来客用にするなら、前日に二度揚げまで済ませ、食べる当日に糖蜜を引くと見た目がきれいです。冷凍は穴に霜が入り、解凍後にべたつくため向きません。
よくある質問
ダウルクルンドゥの葉がなくても作れますか?
作れます。現地らしい香りは弱くなりますが、形の再現にはオクラ粘液が現実的です。オクラの粒を入れず、粘液だけを使えば、青い香りはかなり抑えられます。香りを少し足したい場合は、生地ではなく糖蜜にシナモンパウダーを耳かき1杯ほど混ぜる程度にします。
指で油へ落とすのが怖いです。
細口の絞り袋、ドレッシングボトル、穴を小さく切った厚手の袋を使ってください。ただし、穴が大きいと線が太くなります。最初は油面から15cmほど離し、手を鍋の真上に長く置かないようにします。熱い蒸気と油はねがあるので、濡れた手や水滴のついた道具は避けます。
一度揚げしてから数日休ませる必要がありますか?
伝統的には休ませてから二度揚げする説明がありますが、家庭では当日中でも作れます。このレシピでは30分休ませ、表面の油を落としてから二度揚げします。数日置く場合は湿気と油の匂いが課題になるため、乾燥した場所と清潔な紙が必要です。
食用色素は必須ですか?
必須ではありません。色を付けない透明な糖蜜でもおいしく食べられます。祝い菓子らしい見た目を出したい場合だけ、赤をつまようじの先ほど使います。色素を増やしても味は良くならず、見た目が人工的になりやすいので少量にします。
米粉の代わりに小麦粉で作れますか?
おすすめしません。小麦粉はグルテンで線が重くなり、軽い穴が出にくくなります。どうしても米粉がない日は作業を延期し、製菓用米粉か上新粉を用意してください。アースミの白さと軽さは、米粉で作る方が近づきます。
揚げ油は何を使えばよいですか?
日本の家庭では、米油、キャノーラ油、サラダ油が使いやすいです。ココナッツオイルは香りが強く、温度管理もしにくいため、初回は避けます。揚げた後の油は米粉の細い破片が残るので、冷ましてからこし、早めに炒め物などで使い切ってください。
参考にした資料
- Lakpura「Aasmi (ආස්මි)」:材料、ダウルクルンドゥ、オクラ代替、二度揚げ、色つき糖蜜の流れを確認。
- Lakpura「Lakpura Aasmi」:アヴルドゥの食卓、米粉とココナッツミルク、レース状の食感の説明を確認。
- FoodVoyageur「Aasmi Recipe」:オクラ抽出液を使う家庭向け配合、糖蜜の扱いを参照。














